「変化はいつか、必ず起こります。奴隷解放にしても、婦人参政権にしても、ある時代には誰もができないと思ったことが、その後実現しているのですから。大事なことは、いつ変化が訪れてもよいように、アイデアを常に手元で温めておくことです」―イゾベル・リンゼー(スコットランド市民運動家)―

今年、2009年のノーベル平和賞にアメリカのオバマ大統領が決まりました。

賛否両論に分かれる受賞でしょう。

私は、受賞そのものだけを見ると「早すぎる」という受賞否定派です。

理由は、ノーベル賞の選考プロセスに従うと、彼の実質的な功績はまだ何もないからです。

ノーベル賞選考のプロセスを見ると、受賞候補者の推薦はその年の2月1日までとなっています。

しかし、今回のオバマ大統領の受賞理由が、それより後の今年4月プラハで行われた核廃絶を呼びかける演説、そして彼自らが議長を務め「核なき世界」を目指す決議案をまとめた先月、9月の国連安保理でのイニシアティブが評価されています。

明らかに通常のプロセスからは逸脱した(irregular)選考が行われたことになります。

彼が大統領として就任した今年1月20日からノーベル賞候補推薦締切日である2月1日までの10日あまり、彼が平和賞の推薦を受けるような実績は何もなかったと思います。

でも、彼が選ばれた。

おそらく実績なき受賞者として史上初ではないでしょうか。

もし、オバマ大統領がこれからの任期中、平和賞の受賞理由である核廃絶への貢献に違う(たがう)ようなことをしたら、ノーベル平和賞の評価・価値を大きく下げることになるでしょう。

また、ノーベル財団は今回の選考プロセスを不備があったとして責められるかもしれません。

では、ノーベル財団は、今回の選考にはそのような大きなリスクを伴っていたのだ、ということを自覚していなかったでしょうか。

否、もちろんそんなことはないと思います。

世界で最も栄誉と権威のある賞、ノーベル賞。

通常の選考プロセスを逸脱してまでも、今、この時にオバマ大統領に核廃絶へのイニシアティブという理由で選考した裏に込めた強い決意があるのだと思います。

そこには、核の最大保有国であり、軍事・政治面で最も影響力があり、世界のリーダー国でもあり、一方、世界に脅威を与えている国であるアメリカに対する核廃絶に責任を持て、というメッセージがあるのではないでしょうか。

サブプライムローン問題をきっかけに起こった世界金融危機は、アメリカの過剰消費を前提にした世界経済システムが崩れたことを告げ、アメリカの内政、外交手法が行き詰まった今、もし仮に変な大統領が選ばれていたら現実としてイラクやイラン、北朝鮮やアフガニスタンのタリバンとは比較にならないぐらい世界にとってアメリカ自身が脅威になってもおかしくなかったと思います。

そんな時、オバマ大統領が出てきた。

彼が選ばれたのは、やはり「アメリカの底力」だったのだと思います。

そして、ノーベル財団は、彼に今、この時こそ、という想いで賭けたのです。

伸るか反るかの賭け

さあ、私たちはどうする。

受賞に対して皮肉や批判を繰り返しますか?

核廃絶ができない理由を従来どおり並べて思考停止しますか?

それよりも、だまされたと思ってオバマ大統領と他のリーダーに賭けてみましょうよ。その方がきっと世界は次の世代の子供たちにとってもよくなるはず。

それが「自分たちを信じて行動する(Call to Action)」ということだと思います。